*


「――モテモテだな、花恋」


嘘……。この声――ゆ、唯人だ。



久しぶりだな、懐かしい……。私に『好き』を教えてくれた人。



「おーい、聞こえてないの?」


「え?!ゆ、唯、人……?」



ほんとに、いる……。見た目も全然変わってない。なんだか泣きそう。



「彼氏、いるの?」


そんなこと、唯人には聞かれたくなかったな……。



胸が、何故か痛い。


「いんのかって聞いてるんだけど?」


「い、るよ……」


「あっそ。――でも俺、諦めないから」


諦め、ない……?



「――覚悟してて」



*


久しぶりに会いたくなって見えた幻だったのかな。


だって唯人がこの学校にいるわけないし。



……でも制服は私と同じ学校のだった。


なんでだろう。



「――じゃあ紹介するわね」


新しい担任、佐藤先生だ。


「はいってきて」


転校生?まあ、タイミング的にちょうどいいもんね。


……え。



石川(いしかわ)唯人です。名前はテキトーに呼んでもらって……えっと、趣味は絵を描くこと、です。何か質問があったら言ってください」



石、川……?


名前も見た目も変わんないから唯人なのに変わりない、よね?

……それに自己紹介、全く同じじゃない?



「じゃあ、席は……如月さんの隣ね」


この感じ、覚えてる。懐かしくて泣けてくる。


「またよろしくな、花恋」


「う、うぅ……」


思わず、号泣。

クラスのみんなに変な目で見られてるのが伝わる。


「あー、先生、花恋ちょっと体調よくないみたいなんで保健室連れてきます」


唯人の優しさも、あの時と変わらない。


「唯、人……っ」


忘れようとしたはずだった。――でも、そんなこと一度もできなかった。


私、――まだ唯人のこと好きなんだ。



その瞬間、頭に浮かんだのは結月。


結月、ごめん。ありがとう、こんな最低なやつ好きになってくれて。

高校も私と同じがいいって入ってきてくれたのに。


――ほんとに最低だ、私。