「まあいい。そうやっていられるのも今のうちだよ、アステリア嬢?」

マリアベルはその言葉に眉を顰める。
「何を」と言おうとしたときには、レイニードは声を上げて笑いながら城を出て行ってしまった。

「どういうこと……?」

エントランスにひとりになって、マリアベルはぼそりと呟く。
非常に気にかかる言葉だった。そうやっていられるのも、とは一体どういうことなのだろう。

半分脅しのような、含みのある言葉。
その言葉はただの捨て台詞か。それとも……。

いずれにせよいい気分ではないことは確かだった。
マリアベルが荒立てないことをいいことに、言いたいことを言い放って去って行ってしまったレイニード。

胃の部分がムカムカと込み上げる。
早く水が飲みたい。全てを飲み干してすっきりしてしまいたい。

食堂へ行き、水差しに入っていた水をコップに注ぐと、一気に煽る。さほど冷えてもいない水だが、気持ちが高ぶり身体の体温も上がっているのだろう、体内ではその水がとても冷たく感じた。

濡れた口元を手の甲で拭い、はあ、と息を吐く。
飲み干したらすっきりすると思っていた。しかし、心のもやは消えてはくれなかった。