「さて、早速だけど本題に入ろうか。実はね、マリアベルにやってもらいたい任務がある」

「はい」

任務と聞き、マリアベルの背筋がピンと伸びた。

「この城の西の塔が魔術師団の施設であることは、もちろんマリアベルは知っているね?」

「はい、もちろんです」

「それでだ、その魔術師団を一手に纏める師団長、その者の専属騎士として、彼の警護に当たってもらいたいんだ」

「……私が、ですか?」

「そうだ」

この王国には主に剣術を主に扱う騎士団とは別に、魔術を主に扱う魔術師団も存在する。

城の左右に聳え立つ塔、東塔は騎士団の施設があり、西塔は魔術師団の施設。それぞれ所属された者たちは、そこを基点として与えられた任務をこなす。

魔術師団長といえば、この国でも知らない人間はいないと言われるほど名の知れたお方だ。

幼少期からその魔力量は一流の魔術師以上、かつ学生時代でも常にトップの成績を保ち、そして魔術師団へと配属されてからは異例の早さで昇格、今では最年少で団を一手に纏める第一魔術師団の団長を務めている人物。


「ですが、魔術師団の専属は第一騎士団の方が務めていらっしゃったはずでは?」


第一騎士団は、花形エリートの集まりでもある近衛騎士を抱えるトップの団。
彼らは王族関係者、そしてそれに次ぐ位の高い者たちの警護に当たっている。
無論突然の襲撃にも耐えうる力はありこそけれ、各団長クラスの面々もそれぞれ第一騎士団の騎士が派遣されているのだが。