だが、そこには理由がある。

ジークウェルトが本格的に魔術師として活動し始めた頃、エレノア辺境の町で流行り病が広まった。その病はこれまでの薬草では効かず、死者は日を追って増え、いずれこの国全体の国民たちに蔓延してしまうのでは、と危惧するほどの広まりであった。

その対応に国王が手を焼いていたとき、ジークウェルトが魔力を込めた薬草を作り出し人々に与えた。すると、みるみるうちに病にかかった人々は元気を取り戻し、流行り病も根絶したのだ。

国を病から守りぬいた、英雄。

影の存在も担う魔術師であるため、国王は大々的にその功績を広め称えることはなかったものの、その功績ゆえにジークウェルトは国王からの絶対と唯一の信頼を得、ジークウェルトは異例の早さで魔術師団の団長となったのであった。


現国王は歴代の王の中でも人々からの信頼も厚く、賢王として名高い。国民を最大の宝とし、平民から貴族まで常に気を掛ける心優しき王。
その国王からの絶大な信頼は、なによりの名誉だった。