「任務途中、突然の呼び出しすまないな。まず、そこに座ってくれないか」

レオンハルトは部屋の中央に置かれたソファに座るよう、促す。

立ち話ではない、つまりこれは込み入った話になるのだろうと、マリアベルは覚悟して言われたとおりに腰かけた。

向かい合うようにしてレオンハルトも座る。

レオンハルトと目が合うと、フッとその表情を少し和らげた。

「そんなに固くなる必要はない、肩の力を抜いてマリアベル。ここには俺とお前しかいないのだから」

マリアベルとふたりになれば、レオンハルトは途端兄の顔と変わる。

彼は妹のマリアベルを溺愛していた。普段は上司として厳しくマリアベルと接していても、周りの目がなければころりと優しい兄に変貌してしまう。

「はい、……しかし」

だが当のマリアベルは真面目一徹。兄として接していても、任務中であることは変わらないとその姿勢を崩さない。

そんなマリアベルを見て、レオンハルトはククッと肩を震わせて笑った。

「全く相変わらずだなぁ。少しは気を抜いてもいいんだぞ」

「そう、言われましても」

「兄としては少し寂しいな。まあ、そんなマリアベルも可愛いのだけど」

ニコニコと見つめるレオンハルトに、マリアベルは困惑する。

騎士団長としてのレオンハルトはこんな表情を一切見せない、鬼の団長と言われるほどの人物であるのに、どうしてこうもギャップが激しいのだろう。