そんなマリアベルを、ジークウェルトはサンドウィッチを頬張りながら見やると、またしょうがないといったようにくすりと笑った。

「また良からぬことを考えてるわねぇ?……ふふ、大丈夫よマリーちゃん、アタシたちも毒の耐性はあるの。むしろアナタたちよりも強いから。この食事は毒なんて入ってないから安心して食べて」

「も、申し訳ございません!また大きなミスを!……というか気づかれてましたか」

「うん、わっかりやすくて笑っちゃった。まあでも最初に言い忘れてたアタシも悪かったの、気にしないで。魔術師だって薬草や毒草を使うのだし、耐性があって当たり前なのよ。むしろなければ魔術師にはなれないでしょう?」

「――あ。そう、でした……」

冷静に考えれば、言われたとおりだ。

魔術師は薬作りも大事な仕事のひとつだ。薬を作りそこに魔術を込め効能を上げる。
作成するものによっては毒草を使うこともある。耐性がなければ作成の工程で毒にやられてしまうこともあるだろう。

常に冷静にいなければならないのに、やはりどこかでまだ冷静でいられない未熟さがある。
このような簡単なことも気づかなければ、騎士としては失格だ。

「……ジーク様の騎士となって気づかされることがとても多いです。まだまだですね、私」

「ホントマリーちゃんてば、コロコロと表情が変わって面白いわねえ。いいのよ、大事なのは失敗を今後どう生かすかなのだから。アタシの前ではイッパイ失敗していいの。それだけ受け止める力があるんだし、ね?」

それでもケラケラと笑いながら励ましてくれるジークウェルトに、マリアベルは救われた気がして胸が熱くなった。

「さて、ささっと食べて午後に備えましょう。なんせあの会議はとても長いからぁ。特にレオンの話がね、眠くなっちゃう」

「え、ええ。それは……」

こうしてこの昼は和やかに過ぎていく。
マリアベルはそれまでのジークウェルトの言葉を噛みしめながら、昼食をしっかりと完食した。