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「紘ちゃん、今日も送ってくれてありがとう」
「や、べつに。送るとかそんな大したもんじゃねーだろ、おれの家すぐそこだし」
「でも 毎日一緒に帰ってくれるの嬉しいから」
「あー…そ、」
付き合い始めてから知ったのは、仁菜子はおれが思っていたよりもずっと素直で、積極的だったということ。
付き合ってそろそろ3ヶ月になる。
手を繋いだりキスをしたりするのは一応クリアしてきたけれど、まだ、大きな壁は超えていない。
それはもちろん、仁菜子が初めてだから というのはあるけれど、いざそういう雰囲気を作ろうとしてもおれがチキって部屋に誘えないのだ。
「仁菜子」
「うん?」
「あー……、いや、」
「どうかした?」
気持ちを自覚しているのとしていないのとでは全然違う。"彼女"を部屋にあげるって、想像の5000億倍難しい。
今日こそ、いや、今日こそは。
「……や、なんでもない」
そう思って月日だけが過ぎていく。



