「仁菜子は処女。ぜったい」
「じゃあ紘は童貞なの?」
「……、あ?」
「ちがうよなぁ。紘は童貞じゃないし、その理由も相手も俺は知ってるから分かるけど。同じ理由で仁菜子ちゃんがとっくの昔に処女卒してたらどうすんのって聞いてる。言っとくけど、紘にそれを責める権利はねーよ?」
木暮が楽しんでるのはわかる。おれの気持ちを揺さぶって動揺する姿を見たいんだと思う。結構どころかかなり性格悪い。
「神聖なる雪永 仁菜子の逢瀬、おまえが知らないとこで行われてたりしてな」
有り得ない、有り得ない。
ずっと隣で見てきたんだ。おれじゃない誰かに目移りするようなイメージは無かった。
昨日だっておれのためにコーヒー牛乳くれたし。
「紘ちゃんっ」て、いつも語尾を弾ませて嬉しそうに駆け寄ってくるし。
おれに可愛いって言われたくて頑張ってるし。
……まさか、そんな訳ねーだろ。
そう思うのに、悔しいことに胸がざわついて止まらない。



