「あっ、紘ちゃん」
おれと仁菜子は幼馴染だ。
家は3軒跨いだところにあるので、小学校の頃から毎日の登下校は必然と一緒。同じ道を通るだけだから、べつに苦ではなかった。
帰り道、3軒手前にある仁菜子の家の前でおれたちはわかれる。
ちなみに朝も仁菜子の家の前で落ち合う。家の配置的にそうなだけ。迎えに行っているわけでも見送っているわけでもないので、そこは勘違いされたくない。
「またな」と一言付け足したおれを、仁菜子が呼び止める。
すこしだけ舌足らずなところも仁菜子が可愛いと言われる要素のうちのひとつらしい。おれは思ったことないけど。
「なに」
「まってまって、あのね、これっ」
慌ててカバンの中から何かを取りだすと、「あげるっ」と言って俺の手にそれを握らせた。
紙パック越しに生ぬるい温度が伝わってくる。