悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

唐突に権力を振りかざされた。

「は、はい……」

断れる空気ではなくておずおず返事をすると、広間にいた人々が再びザワッと騒ぎだした。

「まさか、あの皇帝陛下がダンスを踊られるの?」

「しかも相手は噂の王女様よ。信じられないわ」

そうこうしているうちに演奏が始まり、広間中の注目を浴びながら、ナタリアはリシュタルトに誘われステップを踏む。

リシュタルトは、想像もできなかったほどダンスがうまかった。

ナタリアとはかなりの身長差があるから踊りにくいだろうに、少しもそんなことは感じさせない。

「上手いじゃないか」

他人を褒めることがなさそうな彼に褒められ、ナタリアはカアッと赤くなる。

ナタリアが上手いのではない、リシュタルトのリードが上手いのだ。

ナタリアの腰に据えられた彼の掌を、いつも以上に頼もしく感じる。

「まあ、なんて美しい光景なのかしら。おふたりとも顔が整っているから、よりいっそう美しく見えるわ」

「王女様は本当に愛されているんだな。泣く子も黙る皇帝も、愛娘には甘いというわけか」

ナタリアは、まるで夢を見ているような心地で踊り続けていた。

片時もナタリアから目を離さないリシュタルトの眼差しは、穏やかであたたかく――。

彼がこういった表情を見せるのは自分にだけだということを、ナタリアは知っていた。