悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

レオンとナタリアは、城に隣接する講堂に向かった。

荘厳としたゴシック建築のそこは、宴や式典を催す専用の場所である。

見事な光沢を放つ大理石の床に、獣神を描いた壮大なフラスコ画の天井。

レオンがナタリアを連れて大広間に入ると、あっという間に人々の注目を浴びる。

「まあ、レオン王子だわ。年々素敵になられるわね」

「まだお若いのに、なんてかっこいいの……!」

齢十三にして、令嬢たちに熱い視線を送られているレオン。彼女たちの興味は、次第に隣にいるナタリアへと移っていった。

「あら? お隣にいらっしゃるお嬢様って、もしかして……」

「噂のナタリア王女じゃない?」

ナタリアの母が、リシュタルトの妻でありながら不貞を働き処刑されたことは、周知の事実である。

とたんにあれが悲劇の王女かと、皆は憐みのような興味本位のような目つきになった。

「おや? 皆がお前を見ているね。僕の妹が可愛すぎてびっくりしているんだろう」

ニヤニヤしながら、空気の読めない発言をしているレオン。

ナタリアはそんな兄に対し、ひきつった笑みを浮かべることしかできない。

(お父様は、まだいらっしゃっていないようね)

広間の最奥、一段高いところに据えられた玉座は空である。

そうこうしているパーティーが始まり、立食式の会食を経て、ダンスの時間になる。

リシュタルトは、一向に現れる気配がない。

主役不在のまま、パーティーは終盤に差し掛かった。

(きっと直前になって嫌気が差したのね。こんな社交の場にいるお父様なんて、やっぱり想像できないもの)