悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

ナタリアの母である王妃は、リシュタルトの番でありながら浮気をし、怒った彼に処刑されたというのだ。

そしてナタリアの父親はリシュタルトではなく、母の不貞相手らしい。

つまりナタリアとリシュタルトに血の繋がりはない。

(実は本当の親子じゃなかったなんて、致命的じゃない……!)

考えてみたら、ナタリアに獣耳や尻尾はない。リシュタルトは獣人だが、ナタリアは人間なのだ。

うっかりしていたが、血の繋がりがないことは一目瞭然である。

番の設定については、モフ番の序盤に書いてあったので知っている。

獣人には、番と呼ばれる特別な存在がいる。

番と出会えた獣人は、唯一無二として番を溺愛し、他の異性が目に入らなくなる。

番の認識は本能によるものであり、身分も容姿も性格も関係ない。

そのうえ獣人同士であることもあるし、人間を番として認知してしまうこともある。

だが番の認知力はあくまでも獣人にしかなく、獣人同士なら問題ないが、人間を番と認識した場合、必ずしも相手から同じように愛されるわけではない。

ナタリアの母である前王妃は人間だ。だからリシュタルトと結婚して王妃となったものの、彼を心から愛していたわけではなかった。

人間の男と浮気をし、ナタリアをもうけ、怒り狂ったリシュタルトに無残にも処刑されたのである。

番に裏切られた獣人は、溺愛から一転して、番を憎しみの対象とみなすのだ。

つまりナタリアは、生まれながらにしてリシュタルトに憎まれているわけである。

ゼロどころか、マイナスからのスタート。

絶望的な状況であることに気づき、ナタリアの体からガクッと生気が抜けていった。

もはや泣く気力すら起こらない。