それから二年が過ぎたある朝。

ナタリアが厨房でユキの餌を用意し、部屋に戻ると、ドアを開けるなりユキがぴょんぴょん跳ねていた。

鼻のいいユキは、ナタリアが部屋に戻ってくるのを分かっていて、いつもドアの前で待ってくれている。

出会った頃は小さかったユキも、二年の間にナタリアよりも大きくなっていた。

ちなみに一緒に住んでしばらくしてから知ったことだが、ユキは女の子である。

「クウ―ンッ!」

「ほら、ご飯よ」

骨付きの羊肉をこんもりと盛ったお皿を置くと、ユキは尻尾をパタパタしながら食べ始めた。

「ナタリア様、おかえりなさいませ。大ニュースですよ!」

ユキを警戒しながら、アビーが近づいてくる。

ユキは人に容易に懐かない。

ナタリア以外の人間や獣人を警戒して牙を剥くため、皆に怖がられていた。

「来月、リシュタルト様の戴冠二十周年パーティーが行われるのはご存じですよね?」

「ええ。お兄様と私は出席しなくちゃならないのよね。お父様が来られないから」

リシュタルトのパーティー嫌いは有名だ。

城の晩餐会や舞踏会は皇帝不在で行われるのは当たり前になっている。

六歳のナタリアは今回パーティーに参加するのは初めてで、少し緊張していた。