悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「クウー!」

子ドラドはナタリアを見つけるなり、うれしそうに丸い尻尾を振って擦り寄ってきた。

とっさに綿あめのようなその身体を抱きしめると、こちらをじっと見つめている母ドラドと目が合った。

暗闇の中、一心にナタリアに視線を注いでいる黒い瞳――。

ナタリアには不思議と、母ドラドが何を望んでいるのか分かった。

「私にこの子を預けに来たの……?」

母ドラドは一度瞬きをすると、くるりと背を向け茂みに戻っていく。

「待っ――!」

――バンッ!

ナタリアが母ドラドを呼び止めようとしたのと、銃声が轟いたのはほぼ同時だった。

茂みの手前で母ドラドの身体が弾け飛び、ズサッと地面に倒れる。

腹部からは、暗闇でもわかるほど大量の血がドクドクと流れ出ていた。

「や……っ!」 

ナタリアはショックのあまりガクガクと震え、身動きが取れなくなる。

子ドラドを抱きしめているだけで精いっぱいだった。

「弾が当たったぞ!」

「こっちだ!」

男たちの声が茂みの向こうから聞こえ、ナタリアはハッと我に返った。

横たわる母ドラドはもう動く気配がない。

「見ちゃだめ……!」

震える手で子ドラドの両目を塞いだ。

どうして、彼らの欲望のために、母ドラドが殺されなければならないのだろう。

あまりの理不尽さに目に涙が浮かぶ。

「大丈夫。あなたのことは、絶対に私が守るから……」