悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

暗闇のなかそびえる山では、あちこち松明の灯が行き交っていた。

村の男たちが躍起になってドラドを探しているようだ。

(どうしよう。来たはいいけど、考えてみれば私に何ができるっていうの……)

リシュタルトのような強さはない。

獣操師にもまだ遠い。

少しは何かできることがあるかもしれないと思ったけど、考えが甘かった。

今まさにドラドの命が奪われようとしているのに、自分の無力さを思い知って、ナタリアは愕然とする。

ナタリアはただの、四歳のちっぽけな少女だった。

思わずぺたんと地面に膝をついたとき、すぐ脇の茂みがガサッと揺れる。

「え?」

驚きのあまり、ナタリアは息を呑んだ。

茂みから出てきたのが、母ドラドだったからである。

だが昼間と違って獰猛化しておらず、赤くたぎっていた瞳は黒くて穏やかだ。

音もなくこちらに近づいてくる巨体は、ナタリアの五倍はあるだろう。

母ドラドは、子ドラドを咥えていた。

そしてナタリアの目の前に、そっと子ドラドを降ろす。