悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

夜のトプテ村は闇の中に沈んでいた。

人ひとり見当たらず、閑散としている。

ナタリアは家の壁に隠れつつ、昼間の記憶を頼りにドラドがいた山を目指す。

途中、真夜中だというのに、煌々と明かりの灯っている家に行きついた。

聞くつもりがなくとも、壁にぴったりと張り付いているせいで、窓から男たちの声が漏れ聞こえてきた。

「まさか皇帝自ら来るとは思いもしなかったな」

リシュタルトの話題が出てきて、ナタリアはピタリを足を止める。

「だが、皇帝が滞在中だというのに、何も今夜決行しなくていいんじゃないか?」

(決行って、何のことかしら)

気になって、しばらくそのまま立ち聞きをすることにした。

「昼間のドラドの子供を見ただろ? ドラドの子供があれほど懐くのは珍しい。皇帝の手にかかれば、あの手が付けられなかったドラドも保護されてしまうかもしれない。その前にどうにかしようというのが村長の考えらしい」

「以前捕獲したドラドを売り飛ばしたおかげで、村は随分潤ったからな。ドラドがまたあの山に住み着いたんだ、このチャンスをものにしない手はない」

物騒な話に、ナタリアは青ざめる。

神とも崇められるドラドは、ときに極秘に売買されるとギルから聞いたことがある。

ドラドは大変高額で、どんなに厳しく律しようと、密売人があとを絶たないらしい。

男たちの話によると、あの山には以前もドラドが住み着いたことがあり、極秘に売り飛ばしたようだ。