悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

初めて入るリシュタルトの寝室は、思いのほかシンプルだった。

広さはそこそこあるが、とにかく物が少ない。

天蓋付きの大きなベッドに大きな書棚がいくつか、あとはデスクやカウチなどがぽつぽつと置かれているだけだ。

(なんだか寂しい部屋……)

家具のひとつひとつはもちろん豪華だが、寒々しくて、ナタリアは物欲の乏しかった前世の自分の部屋を思い出す。

もっとも大国のトップに君臨する彼と、前世のみじめな自分を重ねるのもおかしな話だけど。  

「近くにいてやるから、ここで寝ろ」

リシュタルトはナタリアをベッドの上に降ろし、布団をかけた。

窓の外では相変わらず雷鳴がとどろいていて、部屋の中が時折ピカッと閃光で照らされる。

「ワン!」

ロイがすぐにベッドに飛び乗ってきて、ナタリアの脇に丸くなる。

「お父さまは、寝られないのですか?」

「俺はそこで寝る。何かあったらいつでも起こせ」

リシュタルトはカウチの方を見ると、ベッドから離れようとした。

ナタリアは手を伸ばし、彼のシャツを掴んで引き留めた。

「行かないでください。怖いのです。一緒に寝てください」