悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「なんてきれいな景色なの……」

「お気に召されましたか? では、しばらくこのままでいましょう」

ナタリアを肩車しながら、ギルは林道を進んだ。

やがて、見覚えのある場所に出た。

ナタリアが一歳の頃、モフ番の世界に転生してしまったことに気づいた、思い出の場所だ。

そういえば、ここで銀色の狼を見たはず。

あのときは自分の運命を知って、どうでもよくなってしまったが。

「ねえ、お兄様。このお城って、狼を飼ってるの?」

「まさか、飼っていないよ。狼やドラドは、特別保護区で大事に保護しないといけない決まりなんだ。一般の家や、王城でも飼えない。この王城にいる獣は、馬と、ロイのような犬くらいさ」

ギルの肩の上にナタリアがいることを、相変わらず不満そうにしながら、レオンが答える。

ナタリアは首を傾げた。

「でも私、前にこの場所で狼を見たの」

「それはあり得ないよ。見間違いじゃないのか?」

「ううん。絶対にいた」

「うーん……。百歩譲って野生の狼だったとしても、あれだけの高さの城壁を乗り越えたとは思えないよ」

「あっ、獣化した獣人だったとか?」

モフ番の終盤で、レオンが金色の狼に獣化したことを思い出しながら、ナタリアが言う。

もっともそれは、レオンに溺愛されているアリスに嫉妬したナタリアが、薬の力でレオンを無理やり獣化させてアリスを襲わせるという非道なものだった。

結果としてアリスとレオンの仲はより睦まじくなり、ナタリアは悔しい思いをするのだが。