悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「おーい、ナタリア。ボールは見つかったかい?」

芝生の向こうから、レオンの声がした。

レオンは犬に襲われているナタリアを見るなり、ピタリと足を止める。

「ロイ? な、なんでロイが……」

青ざめながら、じりじりと後ずさりを始めるレオン。

(え、助けてくれないの?)

てっきり助けてくれるとばかり思っていたナタリアは、拍子抜けした。

どうやら彼は、ロイという名のこの犬が苦手らしい。

「――ロイ、やめろ」

空気を切り裂くような声がした。

リシュタルトだ。

彼のそのひと声で、ロイは我に返ったようにハッハッと荒い息を吐いていた口を閉じ、リシュタルトのもとへと駆けて行く。

そして背筋を伸ばして、姿勢よく彼の脇にお座りした。

ナタリアが顔をぬぐいながら起き上がると、リシュタルトと目が合う。