悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!



「ギル? どうしたの?」

愛らしい少女の声で、ギルは我に返った。

目の前には、ヘーゼル色の瞳を瞬かせ、困ったような表情を浮かべているナタリアがいる。

勉強の時間にナタリアの部屋を訪れたところ、机の上で居眠りをしていたため、寝顔を眺めながら彼女が起きるのを待っていたはずが、いつの間にか過去に思いを巡らせていたらしい。

「おや、もう起きられたのですか? 揺すっても起きないほど深く寝られてましたけど」

意地悪く笑うと、居眠りしていたことを恥ずかしく思ったのか、ナタリアが頬を赤らめた。

「その……、居眠りするつもりなんてなかったのよ? 昨日の夜、遅くまで勉強してて……」

「恥ずかしがらなくて大丈夫ですよ。お疲れなのは分かっています」

(こちらとしては、かわいい寝顔が見られて、得したようなものです)

「それでね、ギル。昨日の夜勉強してて、分からないところがあったんだけど」

ナタリアは、積み上げた書物の中から一冊を引き抜いて頁を開く。

「――あれ? どこだったかしら?」

「ゆっくりでいいですよ。いつまででも待ちますので」

言葉通り、ギルは必死に頁を捲っている彼女の横顔を、ここぞとばかりに眺めた。

十歳になった彼女は、日に日に美しくなってきている。

この頃はかわいさの中に女らしさが入り混じってきて、かぶりつきたいほど魅力的だ。

その小さな鼻を甘噛みして、柔らかな頬をまるで犬のようにねぶり、さくらんぼのような唇に思う存分口づけできたらいいのに。

隣にいる男がそんな不埒なことを考えているとは、純粋無垢な彼女は思いもしないだろう。

ナタリアは子供で、自分のような大人の男など、恋愛対象に考えていないのは充分すぎるほど分かっている。