悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

そのとき、手にしていた銃が落下し、ガサッと物音を立てた。

赤ん坊の彼女がハッとしたようにこちらを見たので、クライドは息を潜める。

今すぐに飛んで行って彼女を抱きしめたい衝動に駆られたが、それが得策ではないことは分かっていた。

「んもうっ、ナタリア様、探したんですよ! ああっ、こんなに泥だらけになって!」

侍女らしき女たちに、彼女が連れ戻されている。

その様子を茂みの中から息を殺して眺めながら、クライドはこれからのことを思案していた。

本能の赴くまま彼女の傍にいるには、それ相応の計画と準備がいる。

ようやく人の気配が亡くなった頃、クライドは立ち上がり、彼女が連れて行かれた方向に視線を向けた。

そして、もう何年も笑ったことのない顔に、静かな笑みをたたえた。

「――待っていてください。俺の愛しい番」