五感のすべてを研ぎ澄まし、彼女を観察することだけに集中する。
彼女の一挙一動に心がざわめき、歓喜し、生きている歓びを感じた。
クライドはそのとき、彼女のために自分がこの世に存在していることを知ったのだ。
雨の日は雨が降り、晴れの日は太陽が照り付ける――そういった自然の摂理と同等の現象なのだと、自分でも驚くほど理解していた。
(ああ、この感覚は――)
遠い昔、寝る間際に、母から似たような話を聞いたことがある。
――『獣人にはね、番といって、運命の相手がいるの』
母は番がどういうものか、どれほど尊いものなのかを教えてくれた。
――『私は運命の相手には会えなかったけど、あなたは会えるといいわね、クライド』
まだ赤ん坊だったクライドは、そのとき母が何を言っているのかきちんと分からなかったが、今は怖いほど胸にストンと落ちている。
(俺の、運命の番……)
失ったはずの獣耳がピンと立ち、毛が逆立つ気配がした。
彼女の一挙一動に心がざわめき、歓喜し、生きている歓びを感じた。
クライドはそのとき、彼女のために自分がこの世に存在していることを知ったのだ。
雨の日は雨が降り、晴れの日は太陽が照り付ける――そういった自然の摂理と同等の現象なのだと、自分でも驚くほど理解していた。
(ああ、この感覚は――)
遠い昔、寝る間際に、母から似たような話を聞いたことがある。
――『獣人にはね、番といって、運命の相手がいるの』
母は番がどういうものか、どれほど尊いものなのかを教えてくれた。
――『私は運命の相手には会えなかったけど、あなたは会えるといいわね、クライド』
まだ赤ん坊だったクライドは、そのとき母が何を言っているのかきちんと分からなかったが、今は怖いほど胸にストンと落ちている。
(俺の、運命の番……)
失ったはずの獣耳がピンと立ち、毛が逆立つ気配がした。



