王宮敷地とは思えない緑豊かな森の中で、クライドはただひたすらリシュタルトが現れるのを待っていた。
空高く昇る月を見上げ、明け方の霧に包まれ、太陽の照りつける眩しい昼を迎える。
また夜がきて昼になり――。
そして三日目、ついにリシュタルトは姿を現した。
冴え冴えとした青天の、燦々と日が降り注ぐ昼過ぎのことだった。
寝ずに侵入していたため、疲れからうとうとし始めていたクライドは、身がすくむようほどの激しい気配を全身に感じ、ガバッと顔を上げる。
茂みの隙間から、おそるおそる向こう側を覗く。
神々しいまでに美しい毛並みを持った銀の狼が、新緑の中をゆっくりと歩んでいた。
クライドは目を見開き、そして震える息を吐いた。
真昼の光に銀の毛並みを輝かせながら歩む狼は、気高く、凛々しく、そして息を呑むほどに美しく――。
クライドは、自分が失ったものの尊さをまざまざと見せつけられたような気持ちになった。
胸の内で怒りが弾け、自ずと歯を食いしばる。
悔しさで、銃を構える手が震えた。
獣化した異母兄は、小高い丘で立ち止まると、彼方に視線を馳せている。
迷いなど、まったくなかった。
一発で亡き者にできるよう、一寸のブレもなく、狙いを定める――。
空高く昇る月を見上げ、明け方の霧に包まれ、太陽の照りつける眩しい昼を迎える。
また夜がきて昼になり――。
そして三日目、ついにリシュタルトは姿を現した。
冴え冴えとした青天の、燦々と日が降り注ぐ昼過ぎのことだった。
寝ずに侵入していたため、疲れからうとうとし始めていたクライドは、身がすくむようほどの激しい気配を全身に感じ、ガバッと顔を上げる。
茂みの隙間から、おそるおそる向こう側を覗く。
神々しいまでに美しい毛並みを持った銀の狼が、新緑の中をゆっくりと歩んでいた。
クライドは目を見開き、そして震える息を吐いた。
真昼の光に銀の毛並みを輝かせながら歩む狼は、気高く、凛々しく、そして息を呑むほどに美しく――。
クライドは、自分が失ったものの尊さをまざまざと見せつけられたような気持ちになった。
胸の内で怒りが弾け、自ずと歯を食いしばる。
悔しさで、銃を構える手が震えた。
獣化した異母兄は、小高い丘で立ち止まると、彼方に視線を馳せている。
迷いなど、まったくなかった。
一発で亡き者にできるよう、一寸のブレもなく、狙いを定める――。



