悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

『諜報員からの情報によると、皇帝は、下弦の月の頃の昼時、獣化した姿で敷地の外れにある森に現れるそうです。何をしているかは分からないのですが、そのあたり一帯は王宮敷地でもずば抜けて人気がなく、暗殺するには最適な場所なようですよ』

反皇族派のダスティンと名乗る男からその情報を聞き出したのは、半月ほど前のことだった。

そして下弦の月の頃に合わせ、二十歳になったクライドは、オルバンス帝国の王宮敷地に侵入した。

もちろん、憎き異母兄を殺害するためである。

この日のために、クライドは懸命に武芸を磨いてきた。

剣術はもちろんのこと、銃の扱いにも殺し屋並みに精通している。

もとより物覚えがよく容量がよかったから、習得は早かった。

異母兄を完膚なきまでに抹殺するために、ありとあらゆる知識も蓄えた。

書物に目を通しただけで、何でも頭の中に吸収できたから、教える人間など必要なかった。

アモンの知識量など、七歳のうちに優に超えていたと思う。

あんな内戦すらなければ今頃は立派に政務に従事していただろうとアモンは嘆いていたが、リカルドにとっては、それすらどうでもいいことだった。

クライドの願いは、憎き異母兄の死のみ。

彼の死を見届けたなら、自分の命はもう必要ではないと思っている。