悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

だが五歳だったその日、無理矢理その特別な世界は閉ざされた。

クライドは自分は何者なのか自問自答し、葛藤しながら、少年期を過ぎ、青年期に突入した。

次に見つかったら今度こそ異母兄に殺されるかもしれない――そんなアモンの懸念から、表立って生きることはできなかった。

別に、王位になど興味はなかった。

異母兄を始末して奪還したいとも思わない。

だがふと、湖や、磨き抜かれたガラス細工に映る自分と目が合ったとき、たまらない吐き気を覚えた。

呪われたような闇色の髪に、紫の瞳、暗い目をした自分。

獣人の力を失ったからといって、クライドは人間になったわけではない。

機能的には人間と大差ないが、心の内では、獣人であることの矜持を捨てきれずにいたのである。

自分は何者なのか――繰り返し自問自答し、居場所を失い、存在意義を保てなくなって、苦しむ日々が続いていく。

やがて心の深い傷は、異母兄への煮えたぎるような憎しみに姿を変えていった。