獣人であることに、誇りを持っていたわけではない。
それまでは、そう思っていた。
ただ、獣化したときに香る風の匂いが好きだった。
獣人はもとより鼻が利くが、獣化した際はより鮮明に匂いを嗅ぎ分けることができる。
花々の香りが交じり合う匂いで、季節の移ろいを感じられた。
雨の匂いと雲の匂いで、天気を予測できた。
木の匂い、草の匂い、水の匂い、土の匂い。
獣化によって、世界は百八十度変わる。
今までは知らなかった世界を、肌で感じることができる。
だが大人たちは、クライドの並外れた獣化能力を放っておいてはくれなかった。
初めて獣化ができるようになったのは、三歳頃だったと思う。
クライドは神童だと騒ぎ立てられ、母から引き離されそうになった。
母は常々、クライドのもとに来る大人たちを追い返していた。
だがある日、クライドはさらわれるようにして、母とは別に住むことを余儀なくされる。
クライドを奪われて間もなくして、母は病に伏して亡くなったという。
孤独だったクライドを支えたのは、やはり獣化能力だった。
研ぎ澄まされた嗅覚に包まれた、百八十度変わる特別な世界だけが、幼い彼の心の支えだったのだ。
それまでは、そう思っていた。
ただ、獣化したときに香る風の匂いが好きだった。
獣人はもとより鼻が利くが、獣化した際はより鮮明に匂いを嗅ぎ分けることができる。
花々の香りが交じり合う匂いで、季節の移ろいを感じられた。
雨の匂いと雲の匂いで、天気を予測できた。
木の匂い、草の匂い、水の匂い、土の匂い。
獣化によって、世界は百八十度変わる。
今までは知らなかった世界を、肌で感じることができる。
だが大人たちは、クライドの並外れた獣化能力を放っておいてはくれなかった。
初めて獣化ができるようになったのは、三歳頃だったと思う。
クライドは神童だと騒ぎ立てられ、母から引き離されそうになった。
母は常々、クライドのもとに来る大人たちを追い返していた。
だがある日、クライドはさらわれるようにして、母とは別に住むことを余儀なくされる。
クライドを奪われて間もなくして、母は病に伏して亡くなったという。
孤独だったクライドを支えたのは、やはり獣化能力だった。
研ぎ澄まされた嗅覚に包まれた、百八十度変わる特別な世界だけが、幼い彼の心の支えだったのだ。



