ナタリアを抱きしめ立っていたのは、療養中のはずのリシュタルトだった。

いつの間に忍び寄ったのだろう、気配がまったくしなかった。

「お父様、どうしてここへ?」

「窓からお前たちが見えたから気になってな」

殺伐としたオーラをにじませているリシュタルトを見て、ギルが呆れたように笑った。

「ああそうか。あなたと結ばれるには、歳の差以外にもひとつとんでもない関門がありましたね」

「……結ばれる? 聞き捨てならん言葉だな。とにかくナタリアはまだ十三歳だ、節度をわきまえてもらう」

リシュタルトは不機嫌に言い放つと、ナタリアの手を引いて歩き出す。

つい先ほどまで不自由そうにしていたリシュタルトの肩がこともなげに動いているのを見て、ナタリアは首を傾げた。

「お父様、肩の傷はもうよいのですか?」

「ああ、これは……。きゅ、急によくなったようだな」