悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「クライド様! 戻ってきてくださったのですね! この十年、私はあなたを探し続けていたのですよ! そしてそのお姿! ああ、ついに忌々しいあの呪いが解けたのですね!」

(クライド? 呪い? 何のこと?)

「クライド? まさか……」

リシュタルトが、彼にしては珍しい動揺の声でつぶやいた。

ナタリアは、ハッと過去の記憶を手繰り寄せる。

港町での食堂で、たしか一度だけその名前を耳にしたことがあった。

クライド――行方をくらましていたリシュタルトの異母弟の名前だ。

ゆっくりと、陶酔している顔で自分を見ているダスティンに近づくギル。

見れば見るほど、獣化した彼はリシュタルトにそっくりだった。

ただひとつ、その瞳の色を除いて。

ダスティンの前まで来たとき、銀色の狼は、いつの間にか長身の美青年に姿を変えていた。

思った通り、彼はギルだった。

だが黒かったはずの髪は銀髪になり、つい先ほどまではなかったはずの銀色の獣耳がピンと立っている。

腰からはフサフサの尻尾が生えていた。

何がどうなっているのか分からないが、今のギルは、どこからどう見ても立派な獣人だ。