悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

リシュタルトは薄目を開け、額にびっしり汗を掻いている。

乱闘したせいで、肩の傷が開いてしまったようだ。

やはり、動き回るにはまだ無理があったのだろう。

「お父様、どうしてこんな状態なのに、私を追ったりしたのですか……? 他の人に任せることだってできたのに……」

するとリシュタルトはフッと微笑んで、朦朧とした目で、垂れてきたナタリアの横毛を掬い上げた。

「お前のことを、他の者に任せれるわけがないだろう? 俺のこの世でもっとも大事な娘なのに」

リシュタルトの言葉が深く胸に染み入って、ナタリアの心を震わせた。

自然と、あふれ出た涙が頬を滑り落ちていく。

傷を負った皇帝自らがあとを追うなどばかげている。

きっと城では今頃重鎮たちが大騒ぎしているだろう。

だが、彼はこうせずにはいられなかった。

他の人間には、ナタリアの身の安全を任せられないからだ。

リシュタルトは知己に長け、武力にも優れた無敵の獣人皇帝だ。

だがナタリアのこととなると、ときどきバカみたいになってしまう。

「お父様、バカなのですか……」

「そうだな、バカなのかもしれない。お前のことが可愛くて仕方がないんだ」

(私は、それほど愛されてるのね)

ナタリアは改めて、自分のような欲にまみれた娘を愛してくれた彼の存在をありがたく思った。

そもそも血も繋がっていないのに、これほどまで深く愛してくれているなんて――。