悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「もしかして、先ほど宿屋の外から音がしたのも、お父様だったのですか?」

「ん? ああ、ちょっと不注意でな……。あの家庭教師はうまいこと撒いたが、そろそろ追ってくるだろう」

ガタンというあの物音は、リシュタルトがたてた音だったのだ。

「お前ら、何をしている! 早くこいつをどうにかしろ!」

踏みつけられ身動きが取れない状態で、ダスティンが彼の配下に向けて叫んだ。

男たちは、ハッとしたようにそれぞれ懐から短剣を抜いてリシュタルトに襲い掛かる。

だが、もちろん無敵の獣人皇帝に叶うはずもなかった。

あっという間に三人とも床に転がされ、気を失ってしまった。

「くそ、こんなはずでは……! あのお方さえいてくれればすべてはうまくいったのに、どうしていなくなってしまわれたのだ……」

ダスティンは配下たちの惨めな姿を見ながら、踏みつけられた腹を抑え、よろよろと起き上がる。

(……あのお方って異母弟のことよね? 今の発言からすると、ここにはいないの?)