悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

床に打ち付けた腕を摩りながら起き上がろうとするイサク。

だがナタリアは、「待って!」とそれを制した。

「そこ、何かある……」

ナタリアは、イサクが滑ったためにめくれた丸絨毯の先を指さした。

薄闇の中、地下へと通ずる扉の取っ手のようなものが見えている。

「ここだったのか!」

イサクが丸絨毯をすべてはがすと、立派な扉らしきものが姿を現した。

今まで見つけた地下室の扉とは、明らかに規模が違う。

イサクは迷わず取っ手に手をかけ、ゆっくりと開け放った。

地下へ続く長い石造りの階段が目に入る。壁には等間隔にランプが置かれ、仰々しい造りだ。

「ここで間違いなさそうだな。優男が戻ってきたら入ってみるか」

だがそのとき、ユキが突如耳をピンと立て、イサクの言葉を無視して弾丸のように階段を駆け下りて行った。

「えっ、ユキ!?」

ユキがナタリアの命令なくどこかに行ってしまうのは、初めてのことである。

突然のことにどう対処したらいいのか分からないでいると、イサクが眉をひそめボソッとつぶやいた。

「“集体”か」