「自分が悪いのにお父様に逆恨みって、ダスティンって本当にダメ人間よね。黒幕のお父様の異母弟には同情するけど」
かつてオルバンス帝国でリシュタルトと異母弟を巡る政権戦いが起こったとき、彼はまだ幼児だった。
にもかかわらず、正妃から生まれた彼こそが正式なる後継者だと大人たちに勝手に盛り立てられ、結果敗北して王室を追われたわけである。
考えてみれば、気の毒な話だった。
向かいに座っているギルが驚いたように顔を上げた。
「皇帝陛下の異母弟が黒幕? そう思われるのですか?」
「あ……」
ナタリアは慌てて口を両手でふさいだ。
ダスティンと見せかけ、異母弟が真の敵だということは、モフ番を読んだナタリアだけが知っていることである。
うっかり口を滑らせてしまい、ナタリアはたじろいだ。
何の裏付けもない今、異母弟が黒幕であることは突飛な考えでしかないだろう。
ギルのバイオレットの瞳が、何かを悟ったように細まった。
「そうですか。ナタリア様は、ダスティンではなく、かつて城を追われた皇帝陛下の異母弟が真の敵だと踏んでいるのですね。――その読みは悪くないです、彼には皇帝陛下を恨む理由がありますから。よくお気づきになられました」
「そ、そう?」
思いがけず褒められて、ナタリアはてへへと笑った。
かつてオルバンス帝国でリシュタルトと異母弟を巡る政権戦いが起こったとき、彼はまだ幼児だった。
にもかかわらず、正妃から生まれた彼こそが正式なる後継者だと大人たちに勝手に盛り立てられ、結果敗北して王室を追われたわけである。
考えてみれば、気の毒な話だった。
向かいに座っているギルが驚いたように顔を上げた。
「皇帝陛下の異母弟が黒幕? そう思われるのですか?」
「あ……」
ナタリアは慌てて口を両手でふさいだ。
ダスティンと見せかけ、異母弟が真の敵だということは、モフ番を読んだナタリアだけが知っていることである。
うっかり口を滑らせてしまい、ナタリアはたじろいだ。
何の裏付けもない今、異母弟が黒幕であることは突飛な考えでしかないだろう。
ギルのバイオレットの瞳が、何かを悟ったように細まった。
「そうですか。ナタリア様は、ダスティンではなく、かつて城を追われた皇帝陛下の異母弟が真の敵だと踏んでいるのですね。――その読みは悪くないです、彼には皇帝陛下を恨む理由がありますから。よくお気づきになられました」
「そ、そう?」
思いがけず褒められて、ナタリアはてへへと笑った。



