悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

すると、背後からふわりと頭に掌を乗せられる。

それは、ギルだった。

ナタリアを心配して、アリスの部屋の前で待ってくれていたのだろう。

「断られたのですね。でも大丈夫です、私がいますから」

「でもあなたに、特別な力なんてないじゃない」

「そうですね。ですが、あなたを守りたいという気持ちは誰よりも強く持っていますよ」

グスッと洟をすするナタリアの頭を、よしよしと撫で続けるギル。

「私だけじゃ敵のアジトに乗り込むのに不満だとおっしゃるなら、強力な助っ人を頼みましょう。心当たりがあります」

「強力な助っ人なんていらないわ。アリスがいなきゃ……」

聖なる力がないと、異母弟には勝てないに決まっている。

「では、行かずにこの城でじっと耐えていますか?」

ナタリアは潤んだ瞳で彼を見つめ、考え込んだ。

答えは、ノーだ。

間近にリシュタルトの死が待ち受けているのに、何もせずになんていられるわけがない。

ナタリアの気持ちが伝わったのか、ギルが優しく微笑んだ。

「ナタリア様、信じてください。あなたは無力なんかじゃない」

「そんなわけ――」

「自分が信じられないなら、私を信じてください。誰が何と言おうと、私はあなたのお力を信じています」

はっきりと断言され、ナタリアは今度こそ本当に言葉を失った。

この人は、悪役令嬢の私を信じるっていうの……?

この国に害をもたらす、嫌われ者の存在なのに。

だがギルの不思議な気迫に押され、少しだけ自分を信じてみようという気持ちが湧いてくる。

そもそも、彼の言うように、城でじっとしていることなどできないのだから。

ナタリアは涙をぬぐいながら、ゆっくりと頷いた。

ギルが満足そうに微笑む。

「では、善は急げですね。さっそく支度にとりかかりましょう」