悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「とにかくご無事でよかった……」

「やはり反政府軍の仕業でしょうか」

「間違いないだろう。殊に最近は、陛下の獣愛護の精神を嫌う輩が増えているからな。獣を私利私欲のために利用したい者たちは、国の獣保護政策は弊害とみなしているのだ」

重鎮たちの会話を耳にしながら、ナタリアはかつてトプテ村で、村人たちが金儲けのためにドラドを売買しようとしていたことを思い出した。

獣を私欲を肥やす道具としか考えていない連中にとって、たしかにリシュタルトの政策は邪魔だろう。

トプテ村での出来事を思い出しただけで、ナタリアは今でも腸が煮えくり返る。

だがそのとき、稲妻のようにハッと閃いて目を見開いた。

「そうだ、ダスティン……」

――思い出した。

モフ番のクライマックスのすべてを。

(お父様を襲った犯人は、ダスティンよ!)

トプテ村で初めて彼の名前を聞いた時も、引っ掛かりを覚えた。

今にして思えば、それはモフ番で彼の名前を目にしたことがあるからだ。

モフ番のラスト、アリスはレオンを救うために、街で情報を集めて敵の巣窟を見つける。

その場所こそが、トプテ村だった。

そして地下室のようなアジトで彼と対峙し成敗するのだ。

城に戻ると、リシュタルトとレオンを襲った敵を捕らえたアリスは歓迎を受ける。

そしてリシュタルトはアリスとレオンの仲を認め、今までさんざんアリスに苦労をかけてきたナタリアを投獄。

――だが、そこで一件落着ではなかった。

(そうよ。たしか城での祝賀パーティーのとき、ダスティンを操っていた本当の黒幕が現れるのよ)

本当の黒幕は、リシュタルトを恨んでいた彼の異母弟だった。

リシュタルトと異母弟の複雑な関係は、以前港町の食堂でイサクがナタリアに語ってくれた通りである。

リシュタルトに国を追われたあと、異母弟は悪魔に心を売り渡し、強大な力を手に入れていた。

そしてダスティンを従えて虎視眈々とオルバンス帝国に混乱をもたらそうとしていたが、アリスによってすべてが水の泡となり、怒りを募らせることとなる。

(それで、お父様は異母弟に刺され、亡くなってしまうんだわ)

すべてを思い出したナタリアは、ショックから両手で口を覆った。

それが、ずっと気にかかっていたクライマックスの泣けるシーンだ。