「大丈夫ですか? 傷は痛みますか?」

「ああ、問題ない」

そうは言うものの、どう見ても彼は苦しそうだ。

悲痛なまなざしで苦しむ父を見守ることしかできない自分の不甲斐なさを虚しく思う。

「もう少し、近くへ」

リシュタルトの大きな掌が、震えながらもナタリアを引き寄せた。

「お前に会いたかった」

「……昨夜もお会いしたばかりではありませんか」

「そうだな。だが死にかけたとき、真っ先に浮かんだのはお前の顔だった」

金色の瞳を柔らかく細め、ナタリアに笑いかけるリシュタルト。

「お前が赤ん坊の時から構っていれば、もう少し長い間ともにいれたのにと後悔した。赤ん坊の頃のお前は、さぞや愛らしかっただろうな」

「お父様……」

「だがこうして命拾いして、お前にまた会えて幸せだ」

リシュタルトの真摯な想いが胸に刺さって、ナタリアの心を震わせる。

喉の奥が熱くなって、たまらなく泣きたくなった。

嗚咽に耐えるため、唇をぎゅっと引き結ぶ。

自分は彼のもとから、すぐにでもいなくなる予定だったのに――。

そんなナタリアの耳に、周囲の重鎮たちのヒソヒソ声が届く。