頭の中が混乱して、ナタリアはすぐに返事ができなかった。

バイオレットの瞳にまっすぐ射貫かれているだけで、無意識のうちに心臓が鼓動を速めていく。

「あなたのお傍にいたい、私の願いはそれだけです。それ以上でも以下でもありません」

ギルの言葉が、今までにないほど甘く胸に響いたそのとき。

「ナタリア様、大変です!」

ノックもなくドロテが部屋のドアを開け、転がるようにして駆け込んできた。

「どうしたの、ドロテ? そんなに慌てて」

「リシュタルト様が、何者かに襲われたのです! たった今お部屋に運び込まれたのですが、ひどいお怪我を負われたようです!」

「何ですって?」

ナタリアは青ざめると、部屋を飛び出した。

廊下を走り、リシュタルトの部屋まで急ぐ。

ドアの前には国の重鎮が数名集まっていた。

「お父様!」

急いでリシュタルトの部屋に駆け込もうとしたが止められる。

「ナタリア様、陛下は今治療中ですので、もう少しお待ちくださいませ」