ある日のこと。
ナタリアはレオンに抱えられ、離宮の窓から外を眺めていた。
新緑の芝生を隔てた先では、真昼の光に照らされ、幾重もの尖塔を連ねる王宮が黄金色に輝いている。
あの宮殿に真の攻略対象であるリシュタルトがいるのだと思うと、胸がうずいて仕方がない。
(一日でも早く、リシュタルト……いやお父様にお会いするチャンスをつかまないと)
ナタリアはレオンにぎゅっとすると、舌足らずな口調で言った。
「おにいさま、だいしゅき」
一歳半を過ぎたナタリアは、少しずつ幼女へと変わりつつあった。
ウェーブした茶色い髪は顎先まで延び、ヘーゼル色の瞳を縁取るまつ毛もふさふさと少女らしくなってきている。
今着ているフリルがふんだんにあしらわれた真っ白なドレスワンピースは、最近過保護気味のドロテとアビーが仕立ててくれたもので、ナタリアの天使のように愛らしい容姿にぴったりだった。
「ナタリア……」
レオンの体が、ぶるぶると震えている。
彼のアイスブルーの大きな瞳が、焦がれるようにナタリアに向けられた。
「もう一度言ってくれないか……?」
「だいしゅき、おにいたま」
もちもちの頬を、彼の頬に摺り寄せる。
たまらないといった風に、レオンがきつくナタリアを抱きしめ返した。
「ああ、なんてかわいいんだ、僕の天使」
「てんし?」
「そうだよ、天使だ。大天使ナタリアだ」
(完全に落ちたわね)
もとより心優しいレオンのことだ、攻略はたやすかった。
次のステップに進むときがきたとナタリアは確信する。
ナタリアはレオンに抱えられ、離宮の窓から外を眺めていた。
新緑の芝生を隔てた先では、真昼の光に照らされ、幾重もの尖塔を連ねる王宮が黄金色に輝いている。
あの宮殿に真の攻略対象であるリシュタルトがいるのだと思うと、胸がうずいて仕方がない。
(一日でも早く、リシュタルト……いやお父様にお会いするチャンスをつかまないと)
ナタリアはレオンにぎゅっとすると、舌足らずな口調で言った。
「おにいさま、だいしゅき」
一歳半を過ぎたナタリアは、少しずつ幼女へと変わりつつあった。
ウェーブした茶色い髪は顎先まで延び、ヘーゼル色の瞳を縁取るまつ毛もふさふさと少女らしくなってきている。
今着ているフリルがふんだんにあしらわれた真っ白なドレスワンピースは、最近過保護気味のドロテとアビーが仕立ててくれたもので、ナタリアの天使のように愛らしい容姿にぴったりだった。
「ナタリア……」
レオンの体が、ぶるぶると震えている。
彼のアイスブルーの大きな瞳が、焦がれるようにナタリアに向けられた。
「もう一度言ってくれないか……?」
「だいしゅき、おにいたま」
もちもちの頬を、彼の頬に摺り寄せる。
たまらないといった風に、レオンがきつくナタリアを抱きしめ返した。
「ああ、なんてかわいいんだ、僕の天使」
「てんし?」
「そうだよ、天使だ。大天使ナタリアだ」
(完全に落ちたわね)
もとより心優しいレオンのことだ、攻略はたやすかった。
次のステップに進むときがきたとナタリアは確信する。



