悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

ナタリアから視線を避けながら、リシュタルトがたどたどしく話す。

(じゃあ、お父様が私を避けていたことにアリスは関係ないってこと? たまたまアリスが来た時期と被っただけで……)

「だが、今は後悔している。俺がきちんとお前のことを見ていれば、こんな惨事にはならなかったはずだ」

「お父様……」

「――肩はまだ痛むか? 二日もうなされていた」

「はい、少しだけ……。もしかして、ずっと傍にいてくださったのですか?」

「当たり前だろう」

忙しいはずなのに、ずっとそばに寄り添ってくれていたのだと思うと、ナタリアの胸が激しく搔き乱された。

(お父様の手、あったかい……)

額に乗せられたままの彼の掌が、たまらなく愛しいものに思えてくる。

ナタリアはここぞとばかりに、聞いてみることにした。

「……その、では獣操師の認定試験を受けることを許してくれるのですか?」

先ほど、リシュタルトはナタリアの獣操力を褒めてくれた。

これはかなりいい流れである。

ところがリシュタルトは、その瞬間、柔らかだった眼差しを戸惑うように泳がせた。

「――それとこれとは話が別だ」

「へ……?」

「もしも受かったら、お前が俺のもとから去るような気がして怖いんだ」

ボソッとつぶやかれたリシュタルトの言葉。

(まあ、その通りなんだけど)

事態は好転したかのように思えたが、そうでもないらしい。

相変わらず、思い通りに動いてくれない父親である。

だが今のナタリアは、なかなか思い通りに動かない彼を、以前のようにもどかしいとは思っていなかった。