(お兄様。お願いだから、もとのお兄様に戻って!)
心の叫びが届いたのか、そこでふとレオンが立ち止まった。
赤く燃え盛る瞳が陰る。
朱色の炎が薄れ、見慣れたアイスブルーの瞳が見え隠れした。
(嘘、効いた……?)
自分のような未熟者が、獰猛化した獣人を癒せるとは思っておらず、ナタリアの胸が歓びでいっぱいになる。
だが、それがいけなかったらしい。
ナタリアの心の乱れを敏感に感じ取ったレオンが、再び瞳を赤々とたぎらせた。
そして前足をピンと伸ばし、襲い掛かる直前のような低姿勢になる。
「グルルルルル……!」
今までとは比べ物にもならないほどの、まがまがしい咆哮だった。
「ウォンッ!」
兄の身体が、天井高く舞い上がる。
次の瞬間、ナタリアは獣化した兄の下敷きになっていた。
目の前で爛々と輝く、鋭く尖った牙。
あっと思った時にはもう、左肩をガブリと噛まれていた。
鋭い牙が肌に食い込む痛みが、全身を刃のごとく貫く。肩口からは、おびただしい量の赤い血が流れ出ていた。
あまりの痛みに、ナタリアは声すら出せない。自分の身体が、真っぷたつに嚙みちぎられたような心地さえした。
あっという間に意識が飛んでいく。
心の叫びが届いたのか、そこでふとレオンが立ち止まった。
赤く燃え盛る瞳が陰る。
朱色の炎が薄れ、見慣れたアイスブルーの瞳が見え隠れした。
(嘘、効いた……?)
自分のような未熟者が、獰猛化した獣人を癒せるとは思っておらず、ナタリアの胸が歓びでいっぱいになる。
だが、それがいけなかったらしい。
ナタリアの心の乱れを敏感に感じ取ったレオンが、再び瞳を赤々とたぎらせた。
そして前足をピンと伸ばし、襲い掛かる直前のような低姿勢になる。
「グルルルルル……!」
今までとは比べ物にもならないほどの、まがまがしい咆哮だった。
「ウォンッ!」
兄の身体が、天井高く舞い上がる。
次の瞬間、ナタリアは獣化した兄の下敷きになっていた。
目の前で爛々と輝く、鋭く尖った牙。
あっと思った時にはもう、左肩をガブリと噛まれていた。
鋭い牙が肌に食い込む痛みが、全身を刃のごとく貫く。肩口からは、おびただしい量の赤い血が流れ出ていた。
あまりの痛みに、ナタリアは声すら出せない。自分の身体が、真っぷたつに嚙みちぎられたような心地さえした。
あっという間に意識が飛んでいく。



