悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

ナタリアは手をまっすぐに突き出すと、赤く燃え盛る獣の瞳をじっと見つめた。

一寸も逸らさず、ただひたすら目力を込める。

邪念は許されない。集中力の途切れも許されない。

獣はわずかな心の乱れすら敏感に感じ取って、襲い掛かってくるからだ。

じりじりとこちらににじり寄っていた金色の狼が、一瞬だけ足を止める。

だがすぐに再び歩を進め、見る間にこちらに迫ってきた。

ナタリアは決してひるまず、息を吸い込むと、古の言葉を口にした。

まだ獣人が獣だった頃、彼らは独自の言葉でやりとりをしていた。

唸り、声、息の吐き方、呼吸の間。

そのすべてが、彼らにとってはコミュニケーションのための手段だったのだ。

語りかけるのは相手の耳ではない、心だ。

獣の本能に、言葉を直接叩き込む。