悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「アリス……?」

(どういうこと? 皆が逃げても、アリスはひとり気丈にレオンに立ち向かっていくはずなのに。そして愛の力でレオンの獰猛化を沈めて、結果としてふたりの仲はより深まるんじゃ……?)

だが目に涙を浮かべながら怯えているアリスは、獰猛化しているレオンに立ち向かっていく様子がない。

「ウォォンッ!」

そうこうしているうちに、獣化した兄の咆哮が、城いっぱいに響き渡った。

「ひぃっ、お、おたすけ~!」

ナタリアが動き出すのを待っていた従者は悲鳴を上げると、ひとりで逃げ出してしまう。

ナタリアはアリスのもとに駆け寄った。

「アリス様、早くお兄様のところに向かってください」

「私、怖くて足が立たなくて……」

床に座り込んでガクガクと震えているアリスは、恐怖で腰を抜かしてしまったようだ。

「でも、お兄様のところに行かなきゃ! どうか、お兄様を沈めてください」

するとアリスが、ナタリアに向かって、軽蔑したような笑みを投げかける。