悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

新緑の清々しい香りに、花々の甘い香り、そして抜けるように青い空。

久々の庭園は、ナタリアの心を弾ませた。

「ほらユキ、キャッチして!」

空高くボールを放り投げると、ユキは巨体とは思えぬ瞬発力で飛び上がり、中空でボールをパクリと咥える。

「上手よ! いい子ね」

戻ってきたユキの背中をふかふかと撫でてやると、ユキは嬉しそうにハッハッと舌を出した。

「ドラドに芸を教えるなんて、ナタリア様以外にはできないことでしょうね」

ギルが、感心したように言う。

「きっといい獣操師になりますね」

「なれればの話だけどね」

ナタリアは、ユキの頭を撫でながらあいまいに笑う。

「レオン様、見て! テントウムシだわ!」

そのとき、垣根の向こうから砂糖菓子のような甘い響きの声がして、ナタリアはビクッと肩を揺らした。

一度聞いただけだというのに、その声はしっかりと耳の奥にこびりついている。

びくびくしながら垣根の隙間から向こう側を覗くと、思った通り、アリスとレオンが肩を並べて歩いている。

葉っぱの上を指差しきゃぴきゃぴしているアリスとは対照的に、レオンは浮かない顔だった。

「アリス、まだこんなところにいていいのかい? お茶会が始まる時間だろ?」

「そうなんですけど、やっぱりレオン様といたいなって思って。もう少しこうしていません? きっと私たちがいなくても勝手に始めてますよ」

くねくねと自分の腕に絡みつくアリスに、レオンは苦笑いを浮かべている。

「でも、ホストがいないのはさすがにゲストに失礼だろう?」

「え……? レオン様は、私よりゲストの方が大事とおっしゃるのですか?」

「いやいや、そんなわけがないじゃないか! 番の君を誰よりも大事に思っているよ」

「よかった、うれしい!」