悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「私にはあなたに勉強を教える義務がありますので、興味ございません」

涼やかな顔で答えると、ギルはナタリアに向かって優雅に手を差し出した。

ユキに抱き着いていたナタリアは、その手に優しく誘われて立ち上がる。

癖がかった黒髪に、ダークバイオレットの瞳が輝く切れ長の瞳。

レオンのような派手さはないが、相変わらず美しい男である。

(そういえば、ギルって何なのかしら)

こんなにきれいなビジュアルをしているのに、モフ番の中でまったく出てきた覚えがないなんて、改めて考えてみるとおかしい。

(もしかしたらモフ番には続編があって、そっちでアリスに惚れる役なのかも)

そうだ、そうに違いない。

アリスが現れてからというものネガティブ思考のナタリアは、続編があったかどうかも分からないのに勝手に決めつけてしまった。

急に、ギルの微笑みが嘘くさく見えてきた。

思わず繋いだ手を振りほどくと、不可解そうな目を向けられる。

「どうかされましたか?」

「……優しくしないで。あなただっていずれは私から離れていくんでしょ?」

今にも泣きそうな顔で、ギルを睨みつけるナタリア。

ギルは一瞬だけ真顔になったものの、すぐにまたもとのように微笑を浮かべた。

「何を言われているのか分かりませんが、私はずっとあなたのお傍にいますよ」

「嘘だわ」

「嘘じゃありません」

ギルが、おもむろにナタリアの手に自分の掌を重ねる。

ギルの手は細くて白く、見た目は女性のようにきれいなのに、触れられると思ったよりもずっと大きく、そして溶けるようにあたたかかった。