悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

モフ番のメインストーリーは、アリス十七歳、ナタリア十五歳のときだった。

十七歳で田舎から出てきて城の侍女となったアリスは、洗濯の最中にレオンに番として見初められ、物語が展開していく――はずだったのに。

まさか二年も前倒しでメインストーリーに入っていくなどとは思いもよらなかった。

(……何がどうなってるの?)

震えながらレオンの様子をうかがう。

レオンは静止画のように動かないまま、じっとアリスを見つめていた。

金色の耳はアンテナのようにピンと立ち、アイスブルーの瞳は驚愕に見開かれている。

「君は……」

ようやく発せられた彼の声は震えていた。

「――君は、僕の運命の人だ」

ナタリアは、足元から全身が崩れ落ちていくような感覚がした。

レオンが片膝をついて、アリスを助け起こす。

エプロンについた砂埃を払われたとき、アリスは今さらのように慌てだした。

「いけません、レオン様……! 私のような者にこのようなことをなさるなんて」

「どうしてだい? 君は僕の運命の人なのに」

「……運命の人? 何をおっしゃられているのです?」