ナタリアが、こっそりほくそ笑んだときのことだった。
「きゃ……っ!」
前方から走ってきた侍女がレオンにぶつかり、その場に尻もちをつく。
彼女が持っていたかごが弾け飛び、中に入っていた洗濯物が辺りに散らばった。
「あいたた……」
侍女は腰を摩りながら体を起こすと、自分の前に立っているレオンを見てはち切れそうなほど目を見開く。
「レ、レオン様!? あわわ、私はなんてことを……!」
サーッと顔を青くすると、侍女はその場に勢いよく土下座した。
「私、そそっかしくて! どうかご無礼をどうかお許しください!」
(どうして……)
散らばった洗濯物の真ん中で、地面に這いつくばるようにして頭を下げている彼女を見ながら、ナタリアは全身から血の気が引いていくのを感じていた。
頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなる。
ドクンドクンと重苦しい鼓動を刻む自分の心臓の音だけが、耳に強く響いていた。
肩下までのサラサラの黒髪。
つぶらな黒い瞳に鼻と口、美女とは呼べないが愛嬌のある顔立ち、まるで子供のように小柄な体躯。
そして水色のワンピースに白いエプロンのお仕着せ――。
(どうしてアリスがここにいるの? 現れるまで、あと一年半あるのに……!)
「きゃ……っ!」
前方から走ってきた侍女がレオンにぶつかり、その場に尻もちをつく。
彼女が持っていたかごが弾け飛び、中に入っていた洗濯物が辺りに散らばった。
「あいたた……」
侍女は腰を摩りながら体を起こすと、自分の前に立っているレオンを見てはち切れそうなほど目を見開く。
「レ、レオン様!? あわわ、私はなんてことを……!」
サーッと顔を青くすると、侍女はその場に勢いよく土下座した。
「私、そそっかしくて! どうかご無礼をどうかお許しください!」
(どうして……)
散らばった洗濯物の真ん中で、地面に這いつくばるようにして頭を下げている彼女を見ながら、ナタリアは全身から血の気が引いていくのを感じていた。
頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなる。
ドクンドクンと重苦しい鼓動を刻む自分の心臓の音だけが、耳に強く響いていた。
肩下までのサラサラの黒髪。
つぶらな黒い瞳に鼻と口、美女とは呼べないが愛嬌のある顔立ち、まるで子供のように小柄な体躯。
そして水色のワンピースに白いエプロンのお仕着せ――。
(どうしてアリスがここにいるの? 現れるまで、あと一年半あるのに……!)



