悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

そんな風にして半年が過ぎたある日の昼下がり、ナタリアは久々にレオンと庭園を散歩していた。

「今日はあの家庭教師はいないようだね」

緑の垣根が複雑に入り組んだ迷路のような道を歩きながら、レオンがきょろきょろと辺りを見回した。

「ギルには部屋で待ってもらっています。ギルと一緒だと、いつもお兄様が喧嘩腰なんですもの」

「そんなことないさ! ただあいつ、お前と話すとき顔が近すぎないか? それがちょっとムカッとするだけだ」

「そうですか? うーん、たしかに顔のドアップが多いような気もしますけど……」

「だろ、だろ!?」

二十歳になったレオンはリシュタルトに騎士団長を任され、政務の一端だけでなく、騎士団の管理にも追われている。

先日城下町の闘技場で行われた年に一度の剣術大会では見事優勝し、その類まれなる腕力と光輝くような容姿から、国中の娘たちの心を虜にしていた。

だが相変わらずナタリアの前では、ただのシスコン兄である。

「ギルのことはいいではないですか。今はお兄様とだけいるのですもの」

にこっと笑みを向けると、レオンは「それもそうだな!」と勝ち誇った顔をした。

リシュタルトと違って、相変わらず扱いやすい兄である。

どうでもいいような会話をしているうちに、城の裏側にたどり着く。

そこは使用人が炊事をしたり洗濯をしたりする場となっていた。