悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

すっかり生きる気力を取り戻したナタリアは、まずは手始めにレオンの手をぎゅっと握り返す。

「おにいたま」

小首を傾げながらあどけなく言うと、ドロテとアビーが口々に驚きの声を上げた。

「喋った! ナタリア様が喋ったわ!」

「なんと喜ばしいことでしょう! これまで一度も言葉らしい言葉を喋らなかったのに!」

ナタリアは調子に乗って、「おにいたま、おにいたま」と連呼する。

レオンが、はちきれんばかりに目を瞠った。

「ナタリアの初めての言葉が“お兄様”……?」

「ええ、ええ! よほどレオン様のことをお好きになられたんでしょうねぇ!」

ドロテが歓喜すると、レオンの頬にほんのり赤みが差した。

彼のまだかわいらしい金色の尻尾が、上機嫌に揺れ動く。

「そうか、それはうれしいな」

レオンが、顔をデレッとさせた。

「ああ、かわいいな。ナタリアは僕のことが大好きなんだね」

ぎゅっと握り返された手は少々痛いほどで、容易にはほどけそうにない。

この調子なら、思った以上に早く落ちそうだ。

無邪気にきゃっきゃと笑いながら、ナタリアは心の中でほくそ笑んだ。