リシュタルトの言葉通り、隅には籐製のリクライニングベッドやダイニングセットが置かれている。

先月辺りから一階部分を何やら工事していたのはこのためだったのだと、ナタリアはようやく知った。

「どうした? 気に入らなかったか?」

何も答えずに呆然としていると、リシュタルトに案ずるように顔を覗き込まれ、ナタリアは慌ててブルブルとかぶりを振る。

「そんな……、気に入らないわけがございません。こんな素敵なお部屋を作っていただけて、嬉しすぎてなんと言っていいか分からなくなったのです」

「喜んでいるならそれでいい」

彼のふさふさの銀色の尻尾が、いつもより楽しげに弾んでいる。

「お父様、本当にありがとうございます」

「ああ」

リシュタルトが金色の瞳を細め、満足げに微笑んだ。

初めてリシュタルトに会ってから十二年が経つが、外見が全く変わっていない。

いまだに二十代前半のような若々しい風貌で、二十歳になったレオンと並ぶと兄弟にしか見えなかった。

獣人は年を取らないというから、羨ましい限りである。