悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「あ、いえ、聞き間違いでは……?」

「急ぎますのでこれにて」

ホホホと誤魔化し笑いをして、レオンから逃げようとするドロテとアビー。

だが、レオンが「見せて!」と駄々をこね始める。

あまりにも大声でわめくものだから、しぶしぶといったように、毛布の中のナタリアがレオンに見えるよう、アビーが膝を折った。

ナタリアの視界いっぱいに、金色の獣耳を持つ金髪の少年の顔が映し出される。

年は、たしか八歳だったはずだ。形のよい眉に、綺麗なアーモンド形の目、アイスブルーの瞳。

「あ、あばぶ……」

子供ながらも、後光が射すような兄のイケメンぶりに、ナタリアは思わず声を出す。

レオンの金色の耳がピクリと動いた。

「あば、あぶば!(さすが、ヒーロー!)」

手を伸ばしてみると、思わずといったようにレオンが小さなナタリアの手を握る。

「きゃきゃきゃっ!」

ナタリアの中の赤ちゃんの本能が、レオンがぎゅっとしてくれたのを喜んでいる。

きゃぴきゃぴと笑えば、レオンはますます食い入るようにナタリアを見つめた

「あら、ご機嫌になったわ。顔色もいいようよ」

「この調子なら、王宮医のところに行かなくても大丈夫なんじゃない?」

突然元気になったナタリアを見て、ドロテとアビーがホッと胸を撫で下ろしている。