悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

およそ一週間後の朝。

イサクに会いに港町に行こうとナタリアが支度をしていると、ノックの音とともにリシュタルトが現れる。

毎日のように政務で忙しくしているリシュタルトが、こんな時間に来るのは珍しい。

「お父様……? お、おはようございます」

今まさに部屋を出ようとしていたところだったので、ナタリアは慌てて何でもない風を装った。

「どうした? ドアの前に突っ立って。どこかに行く予定だったのか?」

「えーと、ロイの部屋に行こうと思ってたんですけど、お父様が来られたのであとにします」

笑って誤魔化すナタリア。

「そうか。その――」

「? どうかされましたか?」

「――今日、一緒にどこかに出かけないか?」

歯切れ悪く切り出すリシュタルト。

ナタリアはきょとんと首を傾げた。

「でも、お父様はお忙しいのでしょう?」

「今日は少し時間ができたんだ。このところ、お前と過ごす時間が減っていたから、どうかと思ってな」

整った顔を伏せながら、ぎこちなく言う冷徹皇帝。

銀色のしっぽがせわしなく振り子のように揺れるのは、彼が緊張しているときの癖である。

(そういえば、最近は夜も疲れて眠って、お父様と過ごす時間がぐんと減っていたわね)